住宅ローンが払えない.jpサイト管理人です。
A太さんには、まず三つの問題点を指摘しました。一つ目は、ローン返済額が家賃と同額くらいなら大丈夫と考えていることです。二つ目は、変動金利の借り入れは返済額が大きく変わる可能性があること。三つ目は、35年という長期間の借入をするとリタイア後も返済を続けなくてはならないことです。今回は一つ目の問題点に焦点を当てます。
物件価格とローン返済額について考えます。首都圏の新築マンションの平均価格は2012年が4540万円でしたが、18年は5833万円に上昇しています(不動産経済研究所「首都圏のマンション市場動向」より)。
A太さんは5000万円が適正な価格と考えていましたが、現在のマンション価格は割高といえます。通常、自由に使えるお金に占める住居費の割合が25%を超えると十分な貯蓄がしにくくなります。住宅ローンの返済があっても必要な貯蓄ができるようにするのが望ましい家計の形です。
◇住居費は自由に使えるお金の25%以内に
まず、A太さん一家が老後資金をためる目安となる「必要貯蓄率」を求めました。今後も共働きを続けることを前提にした必要貯蓄率は9.7%でした。子供の大学資金に600万円を準備しても、老後の生活費は月約29万円が確保できる計算です。
必要貯蓄額は月4万円です(年収が上がれば貯蓄額も上がります)。「2人の手取り年収」から「必要貯蓄額」を差し引くと約447万円で、これを12(カ月)で割ると、1カ月に使えるお金は約37万2500円でした。住居費の上限を1カ月に使えるお金の25%とすると、ローン返済額は管理費や修繕積立費を含めて月9万3000円以内が理想です。A太さん一家のローン返済額が月13万2572円というのは、高すぎると言わざるを得ません。
しかし、首都圏の住宅価格は高騰しているため、住居費を抑えるのは難しいことです。それでも住宅を購入する場合は1カ月に使えるお金を減らす必要があります。A太さん一家の場合、必要貯蓄額と試算通りのローン返済額にすると、1カ月に使えるお金は約24万円となり、その中でやりくりする必要があります。
◇管理費などの諸経費負担も考慮する
もしA太さんが4000万円の物件を選び、親からの援助で頭金として物件価格の2割にあたる800万円を支払うとします。借入金額は3200万円で、これを全期間固定タイプで金利1.5%、返済期間30年とすれば、ローン返済額は返済終了まで月11万438円です。
これに管理費や修繕積立費、固定資産税が加わるため、住居費は年180万円超になるでしょう。まだA太さん一家には高い状況ですが、A太さんがリタイアを想定する65歳までに完済できる計画です。自宅があれば老後の生活費を抑えられるので、安心感を得るために今後も夫婦共働きを前提に購入を検討できます。また住宅ローン減税は、A太さんの場合は所得税や住民税の額自体が大きくなく恩恵は限定的ですが、還付金を着実に貯蓄してローンの繰り上げ返済に充てるとよいでしょう。
ただA太さん夫妻が子供をもう一人希望する場合は、必要貯蓄率を上げる必要があります。産休や育休期間は妻の収入が減る可能性があります。物件価格が高すぎるとその後の資金計画に支障が出ることがあるので注意が必要です。