住宅ローンが払えない管理人です
不動産会社の仕事は家を売ること
2.不動産会社の口車にのせられる
前述Aさんが今度は、不動産会社のセールストークを真に受けて、急いで住宅ローンを決めなければならないと焦って筆者を訪れました。曰く、「今月中にどこの銀行か決めないといけません」。
本当でしょうか?Aさんは不動産会社経由で住宅ローンの審査を済ませていました。売買契約の日取りが決まり、住宅ローン手続き、引き渡しなども順次スケジュールが決まっていきます。ここで気になるのは、不動産会社がどんな住宅ローンを提案しているのか、ということです。
不動産会社の仕事は家を売ることです。従って、購入者の住宅ローンについては、どこが最も有利かといったような視点で住宅ローンを提案することはありません。自社と提携している銀行で、いかに手間なく住宅ローンの審査を通してくれるか、あるいは取引先のメインバンクからの印象をよくするために、特定の銀行に審査を出すこともあるでしょう。しかも、住宅ローン選定の期限が設けられているため、購入者には銀行選別の時間はあまりありません。
たとえば、ネットバンクは購入者が自ら審査申込や審査書類の準備をするため、2~3カ月程度のゆとりがないと借入がマイホーム購入に間に合わないと言われます。となると、Aさんのように、不動産会社にマイホーム購入の期限を設定されている場合は、最も金利が低いと考えられるネットバンクを借入対象から除外することになります。
これは誰の都合かと言えば、売り主や不動産会社の都合です。消費者にとってのメリットはありません。あえて1つあるとすれば、意思決定のできない購入者にとって、期限設定をされることで重い腰が上がって、マイホーム購入という夢の実現に近づくということが挙げられるかもしれません。
「早くしないと家が売れてしまうかもしれない」というセールストークをする不動産のセールス担当者は少なくないでしょう。しかし、ここでの問題は、家を買う前にじっくり住宅ローンの準備を進めずに、行き当たりばったりで家を買おうとすることです。この点は職業柄、無力さを感じるところですが、ほとんどの方が急いで家を買い、急いで住宅ローンを借りてしまいます。
不動産会社は、家が売れさえすれば、どこの銀行のどんな住宅ローンであってもいいのです。ここでは、銀行と不動産会社の思惑は一致します。銀行は審査を素早く済ませる。不動産会社は審査の早い銀行で住宅ローンを組んでもらい売買を完了させる。最強タッグの完成です。双方の利害が一致する中、「住宅ローンについてはじっくり考えましょう」というようなアドバイスの出てくる可能性はほぼありません。